ディナウディオXeo3を自宅で使ってみて
ディナウディオの新しいスピーカーXeo(シオ)。自宅で1週間程度使ってみた結論から言うと、スピーカー、あるいはオーディオの未来を先取りしたような存在で「利便性と音のクォリティのバランス」のいい、コストパフォーマンスの高い製品であるとリポートできる。
まず、ディナウディオのことを簡単に紹介しておくと、その製品は開発から生産まですべてデンマーク国内で行う高級オーディオメーカーだ。ホームオーディオだけでなく、レコーディングスタジオ用としてもハイエンドのカーオーディオのブランドとしても熱い支持を受けている。ここのところフォルクスワーゲン等の純正カーオーディオとしても採用され、一般的な認知度も向上。音自体についても、その製品の信頼性についても素晴らしいクォリティを持っているブランドである。そして、その名前の認知度を更に向上させそうなのがXeoの登場だ。
現在、Xeo3とXeo5の2種類だが、いずれもアンプを内蔵し、しかもスピーカーケーブルのいらない製品だ。CDプレーヤーやPCからの音楽信号はXeoのトランスミッター部に接続させ、そこから16bit/48kHzクォリティの独自規格のワイヤレスでスピーカー本体とリンクさせている。操作はリモコンで行うが、ボタンの数は少なくすぐに使いこなせると思う。
設置の簡単さについて
その特徴の1番目は接続と言うか、設定のしやすさだ。パソコンとUSBケーブルで接続するのもごくごく簡単な設定だけだ。RCA端子を使ったアナログ入力や、光TOSのデジタル入力もある。あとはスピーカーを左右シンメトリーになるようにきちんと設置して、電源コードを壁コンセントや電源タップに差すだけだ。Xeo本体のバックプレートにある電源スイッチをONにしておけば、リモコンの音楽の再生が始まればスピーカーはONになり、入力がとまればしばらくして自動的にOFFになっている。使ってみるとこのあたりが実に快適だ。
音の良さについて
ディナウディオのモットーは「オーセンティック・フィデリティ」である。CEOのエーレンホルツ氏にインタビューした時の体験も加えて意訳すれば「音楽を表現するのに確実で信頼できる、本当の音」といった感じだろうか。そのDNAがXeoにも生きている。高音を再生するツイーターも、低音用のウーファーも長年に渡って熟成されてきた素材と設計思想が投入され、もとの音楽や音の持っていた音色感やダイナミクス、音楽性や演奏の温度感を忠実に聴かせてくれる。平たく言うと、音がなまったり、強調されたりしないのだ。正確でありながら、いや正確だからこその音楽的な音と言っていい。ちなみにPCとのUSB接続やCDプレーヤーのデジタルアウトで接続した場合がもっとも音の鮮度感が高い。ただし、Xeo自体の音調は基本的にアキュレートだが若干シャープな傾向を持つので、テレビ等のRCA端子から入力した音楽もキレのよい音を楽しませてくれる。
想定される使い方について
ひとつの部屋でPCやプレーヤーとXeoが同居していてもスピーカーケーブルなしの魅力はあるが、たとえば、CDプレーヤーのある部屋で音楽を再生し、それをトランスミッターで飛ばして寝室に置いたXeoで聴くとか、あるいは車庫にXeoを片チャンネル分だけ持ってきてモノーラルのモードにして鳴らしながらクルマをいじるなど、さまざまな使い方が湧いてくる製品だ。サラウンドマルチ用としてもXeoが2セットあれば4チャンルの再生が楽しめるし、そんな時にスピーカーケーブルがないのは素晴らしいことじゃないかと思う。
まとめ
ディナウディオXeoの登場は2007年にiPhoneが登場した時くらいのインパクトだと感じた。スティーヴ・ジョブスの言葉を借りれば「スピーカーを再発明」してしまったくらいの製品だ。たしかに今までも無線で音楽信号を伝送し、内蔵アンプで鳴るスピーカーはあったがXeoを聴くと音のクォリティが決定的に違うのだ。この部分に関してはさすがディナウディオと言うしかない。スマートフォンが当たり前になってきたように、スピーカーケーブルなしのスピーカーがゼネラルオーディオとして一般化するかもしれないと思った。
●プロフィール
鈴木裕:ラジオディレクター/ライター
ラジオのディレクターとして2000組以上のミュージシャンゲストを迎え、レコーディング
ディレクターの経験も持つ。
オートバイのロードレースの元・国際A級レーシングライダー。
2010年7月 リットーミュージックより「iPodではじめる快感オーディオ術 CDを超えた
再生クォリティを楽しもう」上梓
文教大学情報学部広報学科「番組制作Ⅱ」非常勤講師(2011年度前期)
オートサウンドグランプリ選考委員、音元出版銘機賞選考委員